教育   聖教新聞より  2016年(平成28年) 8月25日(木)

どう対応する?
突然の登校しぶり

”筆箱レター”でエール

 神戸市須磨区 (会社員 48歳)

 現在小学6年生の長女は、昨年1学期の終わりごろから毎朝登校をしぶるようになり、夏休みが終わるころには「学校に行くのが怖い」と言い出しました。
よく話しを聞くと、担任や友達との関係、勉強などさまざまな要因が絡み合って、集団生活が受け止められなくなっていたようです。
 2学期が始まると朝起きられず、遅刻して登校するようになりました。「学校に行っても楽しいことは何もない」と言う長女。”それなら、楽しいことを作ってあげよう”と長女を励ますため、筆箱の中にこっそり手紙を入れてあげました。
 これはとても嬉しかったようで、それから毎日続けると、「ママの手紙があるから学校に行く」と言ってくれるようになり、今では元気に登校し、目標に向かって猛勉強しています。
 現在、”筆箱レター”は小学2年生の長男の分も準備し、二人への毎日のエールとして届けています。
 日々の小さな一言が希望への一歩につながると実感しています。


エネルギーをためる時

 東京都小平市  (主婦 48歳)

 娘は小学6年生の夏休み明けから学校に行けなくなりました。
 二つ上の兄が重度の自閉症というのもあり、”娘にあまりかまってあげられなかったからかな”と、自分を責めた時期もありました。結局、小学校の卒業式は校長室での参加となりました。
 中学の入学式は一緒に行くことが、入場してくる生徒の中に、娘の姿はありませんでした。保健室に行き、出てこられなかったのです。
 ”中学からは登校できるのでは”という期待もあり、「どうして行けないの!」と、娘を責めて一緒に泣いた日もありました。
 聖教新聞に不登校に関する記事が載ると、切り抜いて何度も読み”負けない!”と自分を励ましました。
 あるとき、クリニックの先生から「学校に行けばいいってものじゃない。今はエネルギーをためる時。好きなことをしてゆっくり過ごしてみて」と言われ、ホッとしました。
 以来、予定が空いた日は娘と色々な所へ行き、一緒に楽しむようにしました。すると、少しずつ笑顔も増え、元気になっていきました。
 今春からから娘は通信制の高校へ。入学式、娘が笑顔で友人と話している姿を見て、”スタートできたな”と思い一人で泣きました。
 3年半の経験は、私たち親子が強くなるために必要な期間だったのだと感じています。これからも、ずっと娘を応援していきます。

忍耐強く信じ続ける

 東京都墨田区 (主婦 50歳)
 
 我が家には、大学2年生の長男、高校1年生の長女、中学1年生の次男、小学5年生の次女がいます。
 長男が高校に入った年のゴールデンウィーク過ぎから、「学校に行きたくない」と言いだし、朝起きなくなりました。
 いわゆる「五月病」と決め付け、毎朝長男をなだめたり怒ったりして、無理やり起こそうとしましたが、布団をかぶって起きてきません。
 取りあえず私はお弁当を作り、いつも通り出掛けていました。
 長男が休んでいる間に体育祭もあり、学校の役員だった私は、自分の子供がいない体育祭を悲しく寂しい気持ちで見ていました。
 そんなある日、「明日から学校に行くから・・・。こうしていても何も変わらないのが分かったから」と言うのです。
 「ふ~ん、分かった」と平静を装い夕飯の支度をしながら、涙をこらえるのに必死でした。
 高校生ともなると、親の説得ではどうにもならないこともあります。納得した答えを自分で見つけないと動けないのかもしれません。     
 ほんの3週間でしたが、イライラして悲しくなり、”子育てを間違えたかな?”と自問自答の日々でした。
 それでも、ジッと待つ。忍耐強く、子供を信じ続けることが大事なのだと勉強させられました。

太陽のような温かさで

 名古屋市千種区 (スクールカウンセラー 65歳)
 
 子供が「学校に行きたくない」と言った時、親は焦り、とにかく登校させようと必死になってしまうのが常だと思います。私もかつて娘で体験しました。
 しかし、不登校の子供たちと多く接してきて、「行きたくない」と言う子どもの”心の声”を聴くことが、何より大切だと実感しています。
 学校に行かなくなる要因はさまざまですが、心を固く閉ざそうとしているのは確かです。柔らかく傷つきやすい子供の心を温かくほぐしていきましょう。
 「どうして登校しないの?」と問い詰めても、子供はうまく答えられないことが多いものです。また、登校しないことを「悪いこと」として子どもを叱ると、さらに心を傷つけてしまいます。
 「イソップ寓話の北風と太陽」に倣えば、家族は子供に「太陽」のごとく接していきたいものです。暖かい太陽にてらされれば、いつしか子供は自ら重いコートを脱いでいくことでしょう。

休むことで心を修復

 神奈川県奏野市 (主婦 46歳)


 長男は中学生になると「頭が痛いから学校を休みたい」と訴えるようになり、徐々に頻度は増え、2年生の6月から登校しなくなりました。
 ただ毎朝、登校の時間になると起きてきて、「学校へ連絡してほしい」と申し訳なさそうに言うので、ある日「心配することは何もないよ。ちゃんと連絡しておくから、ゆっくり休みなさい」と伝えました。
 すると翌日から、昼まで眠り続けるように。その姿を見て、「ああ、ようやく本当の意味で、この子の心は休まったのだな」と感じました。
 以来、長男はリビングでゲームをしたりDVDを見たりして過ごすように。「○○をしなさい」などとは一切言わず、”長男の子供は全て心の治療だ”と捉えました。また、罪悪感をもたせないよう、罪悪感を持たせないよう、日中に買い物を頼んだりもしました。
 世間の長期休暇が明けるころ、「無理に学校に行こうと思わなくてもいいからね。安心しなさい」と伝えた時に、長男の表情がパッと明るくなったことが忘れられません。
 そんな生活が1年ほど続きましたが、友達とはありがたいもので、「部活に来ないか」との誘いに、部活だけ通い始めました。それをきっかけに、別教室で英語の授業を受けられるように。そして、中学3年生になるのと同時に完全復帰できたのです。
 長男は休むことで心を修復していったのだと思います。苦しい期間を経験したからこそ、人の心の痛みが分かる大人に成長してくれると信じています。


子どもを伸ばす親の心構え 2016年(平成28年) 8月28日(日) 

 「最近、子どもが問題行動を繰り返す」ーそんな時は、親自身の普段の関わり方を見直すチャンスなのかもしれません。子どもを伸ばす親の心構えをテーマに、哲学者で「叱らない子育て」(学研)の著者である岸見一郎さんに聞きました。

人間関係トラブルの原因

子どもを伸ばすために大切な親の心構えについて、アドバイスをお願いします。

フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」とされる、オーストリアの精神医学者・アドラーは、”全ての人間関係は対等とみるべき”と考えていました。人間関係のトラブルは、相手の問題に土足で踏み込むような行動をするときに起きます。相手の人格を尊重し、対等に関わることは人間関係を円滑にするために大切なことであると捉えたわけです。このことは親子関係にも通じる大事な視点だと思います。

ーどういう意味ですか。


親子も本来、対等な関係であるべきです。当然大人と子どもでは知識も経験も、とれる責任の大きさも同じではありません。子どもが自分でできないことには周囲の援助も必要です。しかし、人間としては対等なのです。大人のほうが早く生まれたというだけ。子どもと対等であることが分かり、子どもを尊敬し信頼して接すれば、親子関係はとても豊かになります。

「ありがとう」を伝えて

ー対等とは具体的にどのような関係のことでしょうか。

 例えば、カウンセリングを受けるために、親が3歳の子どもを連れて来ました。カウンセリング中子どもは静かに待って過ごすことができました。この時、子どもにどのような言葉を掛けますか。「頑張ったね!」「偉いね!」などと声をかける方が多いのではないでしょうか。
 一方、夫が妻と一緒にカウンセリングに来た時、妻は夫の横に座り、終わるのを待ちました。妻にどのような言葉を掛けますか。子どもに対するのと、妻を褒めたら嬉しくありません。馬鹿にされたと思うでしょう。
 褒めるというのは、能力がある人が上から下に評価を下すことです。対等であるべき夫婦関係で、下に置かれたら妻は嫌な思いをします。だから、「頑張ったね!」「偉いね!」ではなく、「ありがとう」と感謝を伝えるのです。これは子どもにも大人にも言える言葉です。

ー子どもにも「偉いね」より「ありがとう」がよいと?

親子間では知らず知らずのうちに、子どもに上から目線で言いつけてしまうことがあります。子どもは自分が下に置かれることを嫌い、反発します。信頼されてないと感じます。
上から目線の言い方ではなく、「ありがとう」「助かったよ」などと言われた子供は、親に貢献できた、役に立てたと思い、自分は価値がある存在だと実感できます。そう思えた子どもは対人関係に入っていく勇気がもて、友好的な付き合いを結ぶことができるのです。

問題行動を繰り返す理由

子どもが言うことを聞かない時に、怒鳴りつけてしまうことがあります。

 怒鳴って叱りつけるのは、多くの場合、親が子供を下に見ている行為です。だから子供は反発します。最初は言うことを聞いたとしても、長続きしません。
 本来、親から子どもに何かを教える時は、怒って伝える必要はありません。丁寧な言葉で分かりやすく伝えればいいのです。何度も繰り返し教えていく中で、子どもは出来るようになります。
 叱るのは手っ取り早く子どもに言うことを聞かせるためです。「なんでいっつも言っているのにできないの!」「本当にダメな子ね!」などと子どもを責めます。
 ただ、この方法では一時はよくても結局、同じことを繰り返していくでしょう。

ーどうして繰り返すのでしょうか。

子どもをを信頼していないからです。「出来ない子」「ダメな子」と親に思われた子どもは、親から愛されていないと感じます。無視されたと思う。
 無視されたのは子どもにとって何よりの恐怖です。
 だからもっと自分に注目してもらえるように、あえて親が困るような問題行動を起こすようになります。問題行動がどんどんエスカレートしてしまうこともあります。

ー親が子どもを信頼できずに叱りつけると、逆効果になる可能性が高いのですね。

 そうです。問題行動があった時には、子どもを信頼し、自分で理解し解決する力があると信じ、丁寧に教えることが解決するための一番の近道なのです。
 子どもは、親から信頼されていると実感していれば、あえて問題行動を起こして注目される必要がありません。最初はなかなかできないことでも、繰り返し教えていくなかで、徐々にできるようになるでしょう。